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​木村 拓也 

​一般社団法人 大学アドミッション専門職協会 理事長

理事長挨拶

 

 大学アドミッション専門職とは何なのか、アドミッション業務とは何なのか、この問いは、アドミッション・オフィスや入試専門部署に勤務したものであれば、誰しもが自身に、そして、所属組織に向けた問いではないでしょうか。

 そもそも、アドミッション・オフィスなどの入試専門部署設置の契機は、我が国の高等教育史上3回存在しました。1回目は、昭和42年度の入学者選抜方法研究委員会設置に伴う予算措置、2回目が、1997年の中央教育審議会答申『21世紀を展望した我が国の教育のあり方について』で「アドミッション・オフィスの整備」と謳われたことにより、1999年に国立3大学(東北大・筑波大・九州大)のアドミッションセンター設置に伴う予算措置、3回目が、2014年中央教育審議会答申『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』で「各大学におけるアドミッション・オフィスの強化や、評価の専門的人材の育成、教職員の評価力向上に対する支援を行うことが急務」と謳われたことにより、2016年度に予算措置されました。2021年3月には、3回目の予算措置から5年経ち、一つの施策が終わることとなります。

 残念ながら、3度の予算措置にも関わらず、我が国に、大学アドミッション専門職が着実に根付いたとは言い難いのではないでしょうか。その理由の一つは、米国や韓国のそれとは違い、我が国における大学アドミッション専門職の多くが、選抜に関する権限を与えられず、高校訪問などの広報要員としてしか見られてこなかったことに尽きます。一方で、入試データの統計分析に長けた人材、エンロールマネジメントやIR、評価業務、高等教育開発に長けた人材については、これまで、入試専門業務の枠組みに囚われず、学内で複数の業務をこなすことで、自身の学内での立ち位置を自ら開拓していきました。だが、それはあくまで、個人の能力に依存し、大学アドミッション専門職としての職能が体系的に養成された結果ではありませんでした。そのため、一部の大学では、大学アドミッション専門職の雇用が継続的に続かない、あるいは、継続しようにも適任者が見つからない、という結末にならざるを得ませんでした。結果、キャリアパスも明確にならず、大学アドミッション専門職の中には、任期制の不安定な処遇のままに置かれることも多くなりました。こうした現状が続けば、今後、我が国の高大接続・トランジションに関する改革を進める人材が枯渇することが予想されます。こうした状況の中、大学アドミッション専門職が、個々の大学内での入試業務に留まることなく、学内外の連携や協力を通じて、高大接続・トランジションに寄与する専門職の職能を確立することが喫緊の課題である、と考えます。

 上記の背景のもと、九州大学において、先述の2014年中央教育審議会答申『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について』の「評価の専門的人材の育成、教職員の評価力向上に対する支援」の在り方の1つとして、2016年度から、文部科学省教育共同利用拠点である九州大学次世代型大学教育関係拠点の専門的職員養成モジュールにおいて、アドミッション・オフィサー養成プログラムを実施してきました。

 この度、その運営メンバーを中心に、大学アドミッション専門職の確立を目指して、一般社団法人大学アドミッション専門職協会を設立しました。この協会では、大学アドミッションに関する職能を、1. コーチング・コミュニケーター、2. アカデミック・コミュニケーター、3. テスティング・コミュニケーターと定め、大学アドミッションの新たな価値創造を行う大学アドミッション専門職をすべての大学に配置すること、大学アドミッション専門職の奨励制度および資格制度の確立を目標に活動をして参ります。

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